2021年11月、「Homeward NYC(ホームレスの人々にサービスを提供する非営利団体)」は、セントラル・ハーレムに予定されている、LGBTQの若者向けのAffordable Housing (低所得者層を対象とした住居ユニット)の建設を発表。18歳から25歳までのLGBTQホームレスの若者が入居の対象で、「Homeward NYC」が入居者の審査を行う。2023年の秋に完成予定。
ロケーションはセントラル・パーク真上(15 West 118th Street )で、近隣にはスーパーやローカル・ビジネスが充実しており、便利で生活のしやすいエリアだ。9階建で全50ユニット。全て家具付きのスタジオ(日本でいうワンルーム・マンション)である。
特筆したいのはこの施設内で提供されるサービスの内容。メンタルヘルスとカウンセリングのサポート、就職の世話、お金の使い方、料理の仕方等、つまりLGBTQの若者達が総合的なライフスキルの取得ができるように考えられている。独立支援型、サポート・ハウジングの側面があるわけだ。
空室率が1%を切るニューヨークは、表向きはどうあれ、トランスジェンダーの人々が部屋を借りやすい状態とは決して言えない。それに加え、家族によるサポートがないLGBTQの若者が失業した場合、売春に手を出す可能性が非常に高い。
LGBTQのスペクトラムの中で、最も脆弱な黒人やラテン系トランスジェンダーの若者達のために、生活支援型のプログラムは長いこと必要だった。
「Homeward NYC」CEOとエグゼクティブ・ディレクター、Jeannette K. Rurfinsはこう話している。
「初の試みである、この住居プログラムは、ホームレスの若者たちが安心して生活し、必要なスキルを得て、トラウマから癒される時間を持つことを目的としたものです。そしてそれは、彼らが人生に前向きに立ち向かう姿勢につながるのです。彼らへの住居サポートはホームレスの問題の根絶に欠かせないものです」と話している。
また、ハーレムのLGBTQ非営利団体 「Harlem Pride」のCEO, Carmen Neelyはこう述べている。「この数十年の間に、LGBTQの人権活動は目覚ましい発展を遂げました。ですが、沢山のLGBTQの若者たちがホームレスにならざるを得なかったのは、家族やコミュニティによる拒絶が原因です。そしてそれはこのハーレムでも同じこと。知事が私達のコミュニティの若者たちに力を注いでくれたことに何より感謝しています。」
だが一方、現在ニューヨークにはどれだけの数のLBGTQの若者がストリートで暮らしているのだろうか。
非営利のLGBTQホームレス擁護団体「True Colors United」の調査によれば、全米の若者のホームレス人口のうち、現在LGBTQの若者が約4割を占めている。そしてニューヨークではその割合がさらに高い。1万5千人から2万人のホームレスの若者の中で、8400人がLGBTQの若者達。圧倒的な数字だ。
今回発表されたLGBTQの若者の為のハウジング・プロジェクトは、LGBTQ コミュニティが祝うべき一歩と言える。だが、8400人のLGBTQホームレスに対して、たった50のユニット。途方もなく先は長い。そこを考えると祝っている場合でもない。
LGBTQ若者達の人生をポジティブなものに導くプログラムとして是非、早急に展開して欲しいものだ