G-1HL8FWJ73X

ブロンクスに再生した唯一の LGBTQセンター『Destination Tomorrow』突撃訪問

//

3月上旬、サウス・ブロンクスにある唯一のLGBTQセンター「Destination Tomorrow 」を訪れた。訪問の理由は、今回発売するChoking Victimポスターの収益の一部の寄付を是非このセンターにしたい、と考えたからだ。

8年前に思いついたアイデアながら、様々な理由で伸び伸びになっていたこのゲイバー用Choking Victim ポスター。やっと仕上がったのが2020年4月だった。そしてその翌月、ジョージ・フロイド氏が、インディアナのミネアポリスで現役の警察官によって窒息死させられる事件が起きた。

そしてそれを皮切りに、アメリカ各地でで大規模なBlack Lives Matterデモが起き、アメリカが大きく揺れた。ポスターのテーマが「窒息」であることから、その時点で表に出すのは問題外と考え、プロジェクトを延期した。

今回寄付先に「Destination Tomorrow」を検討したのは昨年末に見たニュース番組がきっかけだ。パンデミック中にブロンクスで少なくとも3人のトランスジェンダー達が殺されている。「Choking Victim」とは、LGBTQの中で最も脆弱な立場に置かれているトランスジェンダー達のことか、と思い当たったのである。

そしてこの「Destination Tomorrow」は「トランスジェンダーを含むLGBTQ+コミュニティ・メンバーが、お金についてのリテラシー(識字率、この場合はお金を正しく使いこなす能力)を習得し、住居やキャリア・プランに関する援助を得るためのスペース」なのだ。ポスター収益の寄付先として、パーフェクトな選択だ。

ブロンクス行き2番線に乗り込み「3Ave-149th St」の駅で下車。ブロンクスで最も賑やかな商店街が続く149ストリートに沿って2、3分歩くと、目的の建物に着いた。

建物前には目立ったサインもレインボーフラッグもない。ブロンクスはニューヨークの中でトランスジェンダーやゲイに対するヘイトクライム率が一番高い。サインを出すことが、逆に訪問者の危険につながる可能性を考えての配慮なのだろう。

入り口でスタッフに訪問の理由を説明すると、スタッフに従って、センターの中を歩く。バレエ教室のような広く、がらんとした部屋を次から次へと歩き回った後、通された部屋の一つで、プログラム・ディレクター、セイジ・リベラに紹介された。まるで迷路のような建物だ。

セイジにポスターのプロジェクトを説明し、寄付を考えている旨を伝えると、非常に喜んでくれた。「残念なことに、ニューヨークの中で一番最後にできたのが、このブロンクスのLGBTQセンターなんだ。」とセイジは言う。

セイジは言明しなかったが、裏にこのような背景がある。ブロンクスには2004年から2012年まで、別のエリアに非営利のLGBTセンターがあった。だが、当時の責任者リサ・ウインターズが、33万ドル(日本円で3500万円)以上を個人的に使い込んでいたことが発覚。経済的に立ち行かなくなり、2012年に閉鎖に追い込まれたのである。

当時のセンターは1000人以上のクライアントを抱え、HIV/AIDSに関するサポートばかりでなく教育や福祉サービスにも幅を広げていたと言う。この突然の閉鎖はブロンクスの沢山の若者やプログラムを支えてきたスタッフにとってショック以外のなにものでもなかっただろう。

そして2018 年に発足したこの「Destination Tomorrow」 はブロンクスのLGBTQ のコミュニティにとって過去からの「再生」を意味する。

君は日本人だよね?と聞いた後、セイジは「実は宇多田ヒカルの大ファンなんだ」と言う。プエルトリカンのセイジが宇多田ヒカルのファンとは。アニメの主題歌で宇多田の声にハマったのだそうだ。

ディレクターのセイジ・ロペスとの興味深い会話は次回ご紹介。

そして「Destination Tomorrow」 に興味のある方はこちらからどうぞ。

Authors