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アビシニアン教会とホイットニー・ヒューストン。ハーレム三昧の日曜日

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昨年(2021年)の12月第一週目の日曜日に、ハーレムの138丁目にあるアビシニアン・バプティスト教会(www.abyssinian.org)の礼拝に参加した。 1923年に完成し、ニューヨーク初の黒人議員だったアダム・クレイトン・パウエル Jr.が説教師を務めていたことで知られる由緒ある教会だ。現在も数々のセレブリティや政治家が遊説に立ち寄る。

これまで礼拝に積極的に観光客も受け入れてきた教会だが、パンデミック以降はソーシャル・ディスタンスの影響で席数が限られており、教会のメンバーとゲストのみ教会に入れる。連れ合いのジェイソンがメンバーなので私は問題なかったが、入り口で何人かが入場を断られているのを見た。

2005年に、この教会で開かれた故ホイットニー・ヒューストンの為の祈祷会に参加したことがある。あの頃ホイットニーの人生は災難と苦悩の連続だった。ホイットニー自身は参加しなかったが、母親のシシー・ヒューストン、女優ジェニファー・ルイス、黒人政治家のアル・シャープトン他、数人のセレブリティも来て、平日の夜にも関わらず、2000人以上が参加したと言われる。

だが、参加者の大半はホイットニーの知り合いではなく、このコミュニティの住人達だった。あの夜ハーレムは、傷付いたホイットニーのために祈ったのだ。ハーレムの住人のハートは温かい。

その晩、私が到着した頃には教会は既に満席で、礼拝堂の後部で立ち見となった。待合室のモニター前にも大きな人だかりが出ている。「ホイットニーのために祈ろう!彼女は私たちのコミュニティの一人なんだ。ここにいる誰もがホイットニーなんだ」アル・シャープトンの割れるような説教が響いた後、シシーがゴスペルを歌った。彼女の歌から痛みが迸るように溢れ、会場を満たし、会場にいた全員が泣いた。

そういう特別な思い出のある教会だが、普段の礼拝で歌うクワイヤもかなり本格的で、音楽的にも楽しめる。それも観光客を惹きつける一つの理由だろう。

今日は礼拝後に、毎年恒例の「ヘンデルのメサイア」のリサイタルが予定されており、メトロポリタン・オペラのソプラノ歌手、ブランディ・サットンがソロを歌った。ブランディはこの教会のメンバーなのだ。このクワイア、どのソロイストも素晴らしいのだけど、やはりブランディの声の輝かしさとフレージングの見事さは別格であった。

私はクリスチャンではないが、時々礼拝に参加して、牧師の話を聞くのもなかなか良い。礼拝の後、ハーレムを歩いて126ストリートの「コーナーズ・ソーシャル」でブランチをした。その後レノックス・アベニューをセントラル・パークへ向かってそぞろ歩き。久し振りに絵に描いたようなハーレム三昧の日曜日になった。

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