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「もうひとつのメトロポリタン美術館」〜アートを通じて学ぶLGBTQ Vol.2「シャルパンティエ夫人とその子供たち」

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「シャルパンティエ夫人とその子供たち」 -Georges Charpentier et ses enfants
ピエール=オーギュスト・ルノワール(フランス)
-Pierre-Auguste Renoir 製作 1878年 – 1879年

幸せに満ちた人物画で知られ、「幸福の画家」も呼ばれた ピエール=オーギュスト・ルノワール。『印象派』の代表的なアーティストの一人だ。独特の柔らかさと甘さを湛たえた作品で知られ、日本でもファンの方は多いのではないだろうか。

「印象派」とは1870年代にフランスの画家たちが始めた 新しい芸術運動のこと。 丁度カメラの性能が向上し、写真のクオリティが飛躍的に向上し始めた頃である。

描写に関して、カメラに敵うものはない。それが歴然となり、画家達は自分がどのような方向へ向かうか急遽、模索する必要があった。写真には表現できない光と影。湿度や空気感。そういった「自分が受けた印象」をどう表現するか。それを追求したのが「印象派」だった。

「印象派」が面白いのはアーティストによって、アプローチが全く異なることだ。南国の色彩を思わせるゴーギャンの作品、点描で幻想的な世界を展開するスラー、黄色の配色が印象的なゴッホ、そして独特の甘さが特徴のルノアール。彼らの描く世界に自分のチャンネルを合わせると、新しい世界が目の前に突然広がり、時間が経つのを忘れる。そしてメトロポリタン美術館には印象派の名作が多数展示されている。

Ia Orana Maria (Hail Mary)1891
Paul Gauguin French The Metropolitan Museum of Art, New York,

 

Georges Seurat (French, Paris 1859–1891 Paris) Circus Sideshow (Parade de cirque), 1887–88 The Metropolitan Museum of Art, New York,

 

今回紹介する作品はニューヨークのメトロポリタン美術館に展示されている「ジョルジョ・シャンパルティの夫人と子供たち」

当時シャンパルティエ夫人はパリの社交界の中心的、そしてその夫はフランス屈指の出版事業者、ジョルジョ・シャンパルティエ。当時こうしたファミリー・ポートレートを、人気の画家に描いてもらうのが上流階級の流行だった。

この絵から当時の富裕層の生活ぶりが伺える。背後にはアジアから輸入された屏風(超高価)、 そして当時の流行だった黒のオートクチュールに身を包む夫人。その眼差しの先には、お揃いの服を着た愛らしい「娘たち」の姿が。

いや、ちょこんと椅子に座った真ん中の子供の名前はポール。女の子ではなく、実は男の子なのだ。実はこれが今回の話の中心である。一体なぜ、息子のポールは女の子の格好をしているのだろうか。

男児の死亡率が高かったヨーロッパの上流階級では、 男児には女の子の格好をさせて育てるならわしがあった。 医療水準の低さもあり、女装には跡取りを狙う悪魔を惑わせ、男の子を守る、 魔除けの役割があったのだそうだ。(第26代アメリカ大統領、テオドア・ルーズベルトの幼少の頃のもので、少女の服装で写っている写真が複数残されている。)

親が子供の健康を願う気持ちはいつの時代も変わらないものだが、 それにしても女装に魔除けの役割があったとは、ちょっと意外だ。第26代アメリカ大統領テオドア・ルーズベルトも幼少の頃に少女の服装で写っている写真が複数残されている。

幼少の頃のテオドア・ルーズベルト大統領

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