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サウス・ブロンクス「ヘイトクライムで殺害されたトランスジェンダー達を偲ぶ日」と彼らの住居事情

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rememberance
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11月20日は「Transgender Day of Rememberance」、ヘイトクライムによって命を落としたトランスジェンダー達を偲ぶ日だそうだ。パンデミックの余波が続いた2021年、アメリカではこれまで(12/1/2021現在)46人に及ぶトランスジェンダーおよび性別不適合の人々がヘイトクライムによって殺されている。ブロンクスにあるLGBTQセンター、「Destination Tomorrow」では、昨年(2021年)この日に被害者達を忍ぶ祈祷会とマーチを敢行した。


私は現在サウス・ブロンクスのポート・モリスというエリアに住んでいる。ハーレム川に掛かる橋を渡れば、マンハッタンから徒歩で帰れる近さ、そして広さと手軽な家賃が私達が移り住んだ理由だ。

かつては全米一危険なエリアと称されたサウス・ブロンクス。だが近年再開発が進み、次々と高層のラグジュアリー・ビルが建設され、バーやレストランも次々に開き、賑わい始めた。今後ハーレム・リバー川沿いの整備が整うにつれ、注目エリアになるだろう。

そんな変わりつつあるブロンクスだが、パンデミック中に少なくとも3人のトランスジェンダーがブロンクスで殺されている。いずれも黒人やラテン系のトランスジェンダー達だ。GLAAD(Gay & Lesbian Alliance Against Defamation)によると、トランスジェンダーの人々がヘイトクライムによって命を落とした事件が2021年に記録的に増加。少なくとも45人が死亡し、その殆どが黒人またはラテン系だった。トランスジェンダーのホームレス率も非常に多い。

現在ニューヨーク州にはトランスジェンダーであるという理由で大家が貸し出しを断ってはいけない法律(Sexual Orientation Non-Discrimination Act (SONDA)がある。それだからといって彼らの住居問題が片付いたわけではなく、水面上から姿を消すだけの話だ。

同じビルに住むテナントが、トランスジェンダー達に偏見や性的な興味を持っている場合はどうだろう。大家も他のテナントの反応を考慮したり、更なるセキュリティについて具体的に考える必要が出てくる。何より怖いのがレイプや暴力沙汰だ。ビル内で暴力沙汰がおきた場合、責任の全てが大家に転嫁される可能性がある。親切でしたことがどう仇に出るかわからない。その懸念が大家を慎重にさせ、踏み止まらせる。アメリカは世界に名だたる訴訟国家。後々のトラブルを考え、マネージメントも大家もできる限り無難なテナントを選択するのも理由あってのことなのだ。

空き部屋が極めて少ないこと、そして部屋を借りる為には年間収入が賃料の40倍以上あることが求められるニューヨークでは、部屋を借りることがそのもの難しい。

ニューヨーク市は住居問題を法律によって押し切って解決しようとするが、これでは事態は変わらない。解決されるべき問題が解決していないからだ。

解決のためのアイデアの一つは、ニューヨーク中のLGBTQコミュニティメンバーにアウトリーチすること。彼らに現在トランスジェンダー達が直面している住居問題をアピール。そしてLGBTQコミュニティメンバーが所有するマルチ・ファミリー(より安全か)スタイルのタウンハウスにトランスジェンダーのテナントを受け入れてもらう。長期的に成功するハウジング・モデルの作成が早急に必要である。

まずはLGBTQコミュニティ内で意識を高め、モデルとなる解決策を探る。トランスジェンダーの問題なら、LGBTQのコミュニティの中で、まずは解決の糸口を見つけようではないか。

さて、それにしてもこの、「Destination Tomorrow」というLGBTQセンターの持つ志は素晴らしい。彼らがこの団体を作った目標は「トランスジェンダーの人々がお金についてのリテラシー(識字率、この場合はお金を正しく使いこなす能力)を習得し、住居やキャリア・プランに関する援助を提供するスペース」なのだそうだ。

近いうちにこの「Destination Tomorrow」というオーガニゼーションに足を運んでみることにする。

https://destinationtomorrow.org/

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